大聖歓喜天利生記


現在では東京都の大井聖天でしか入手出来ない聖天様の利生談(御利益を受けた体験談)をまとめた書籍「大聖歓喜天利生記」の一部を要約して、こちらに記事として残しておきたいと思いますので参考にして下さい。この本は二部構成になっており、第一巻と第二巻というふうに内部で分かれています。第一巻の方は主に林屋与次郎博士が見聞したり体験した利生談を書き綴っているものであり、第二巻は複数の信者が体験した利生談が書かれています。

大聖歓喜天利生記

〔大聖歓喜天利生記 第一巻〕


・林屋友次郎博士の実家は代々毘沙門天を信仰していたが、幼い頃から半ば強制的に信仰させられた反動もあって、博士は30歳くらいまではほとんど無神論者に近かった。

・父親の本家の金策に関わる偶然の出来事がきっかで、もしかしたら神仏の力はあるかも、と思うようになる。奇しくもその時に本家が祈祷して拝んでいたのが聖天様だった。

・江戸時代の金沢の亀田という薬屋が聖天様を信仰して御利益を受けた話、博士の従兄は度々没落しているものの、聖天様にお祈りする度に盛り返し、御利益を受けている話など。

・博士が銀行の重役を辞任した後に専念していた鋼材会社の経営が段々難しくなり、聖天様におすがりしなくては立ち行かなくなってきた。

・待乳山に日参したりして聖天様にお祈りをするようになると、不思議と金を貸してくれる相手が出てきた。そうこうしてるうちに会社が順調に行くようになった。

・御利益に見えたのは偶然の巡り合わせに過ぎないと考えるようになった矢先、暴風雨による津波が起こり、会社が水に浸り大損害を蒙る出来事が起こる。

・製品が出せなくなったり、修繕費がかさんだりで金策に行き詰まり、一世一代の難境に陥る。再び聖天様におすがりし、日参、浴油供依頼、ついには行者さんから修法を授けてもらい、自宅で華水供を修し、あらん限りの力で聖天様にお祈りした。

・すると不思議なことに、突然、従兄の林屋友作が上京してきて、自分と面識のある松方公爵に会社の救済方法を相談することを提案。公爵の口利きで三菱の岩崎男爵から融資をしてもらうことが出来き、会社は苦境を脱することに成功。。融資が決まった日は奇しくも三週間の特別大浴油供の満願の日だった。

・その後、喉元過ぎれば熱さ忘れるで、聖天様への信仰は続けていたが、当初の熱心さは影を潜めペースダウン。

・しかし伯父一家が昵懇にしている強力な聖天行者の小松師と出会い、聖天様への信仰心が再び強く刺激される。その後も様々な難局に直面するが、小松師の助力と聖天様の御利益をいただき・・・(以下本編に続く)


〔大聖歓喜天利生記 第二巻〕

○塩魚屋と狼の話

・文政二年頃、京と丹波の国境での話。売り物の塩魚を仕入れた魚屋が山道を歩いている。男は日頃から、聖天様を熱心に信仰していた。心細いこともあって、今日もまた聖天様の御真言を一心に唱えていた。

・ふと見ると、犬のような生き物が魚が入った盤台をくんくんと嗅いでいる。しかしハッとしてよく見ると狼のようだ。しかし飛び掛ってくる様子はなく、どうやら魚を狙っているらしい。

・男は人間に話すように狼に語りかけ、「これで勘弁しておくれ」と頭を下げて魚を一匹取り出して、聖天様の御真言を唱えながら狼に与えた。

・狼はその魚で満足したらしく、今度は先に立って歩いていく。男は危難を免れたことを喜び、御真言を唱えながら故郷の聖天堂に向かって頭を下げた。この出来事があってから男はさらに信仰熱心になり、妻子と共に聖天様にお参りするようになっていた。

・商売で同じ道を通る時は、大体あの狼がうずくまっていて、魚を一匹やるといつも御礼のつもりか、峠の下り路辺まで先に立って案内するようになった。

・天気の崩れかかっていたある日、あの狼が現れて、魚には見向きもしないで、男の裾を咥えて左に引っ張る。ついには前足をかけられて押し倒されてしまったが、その瞬間に猛烈な光と落雷の音が響き渡り、男は気を失ってしまった。

・夕立に打たれて気が付くと、近くにあった巨木が落雷で真っ二つに割れて倒れていた。あのまま歩いていたら巻き込まれて命を落していたかもしれない。

・男は前足を怪我した狼を連れ帰り、医師に手当てしてもらった。幸いまもなく良くなったので、魚をどっさり付けて離してやった。

・その後、狼は現れなくなったが、男がいつも拝んでいる聖天堂の御厨子を老僧が開けた時、聖天様の御手が折れていたという。その後、魚屋は一家揃って熱心に聖天様を信仰したので、亀山で唯一の資産家になったということである。

○恵みの楽器

・ある熱心な聖天信者の長男が小さいころから音楽的な才能に恵まれ、現在、高校二年になるが、この先、音楽学校に進み、将来はピアニストになりたいと両親に打ち明ける。しかし、そのために毎日8時間はピアノを弾かねばならず、ピアノがなく、ピアノを購入する経済力もない当該信者の家では、そのことが致命的な障害として横たわっていた。

・情熱的な意欲に燃える長男は、学校のピアノを貸してもらったり、貸ピアノを転々とするなどして懸命に練習を続けたが、無理が祟って身体を壊してしまい、さらに学校のピアノが使えなくなるアクシデントまで発生する。

・悲嘆にくれる長男を親として見るに堪えず、日頃から信仰している聖天様におすがりするしかないと、聖天様の朝詣りの会の後、七日間で金剛経を一千巻読誦の決意をし、一心不乱にお祈りを行い始めた。

・四日目のこと、信者の奥さんと面識のある、近所に住むS夫人が信者の長男の事情に痛く同情し、使っていないピアノをお宅に貸し出してもいいとの申し出を行ってくれた。

・S夫人の好意でピアノが信者宅に運び込まれ、長男は無理をせず、一心不乱に自宅で練習に明け暮れることが出来た。

・しかし、皮肉にも夏休みを過ぎた数ヵ月後、資金繰りに困ったS夫人からピアノを売りたいとの話があり、事態は再び暗転する。ピアノを買い取れるお金もなく、ピアノが自宅から運び出されるのを認める以外に手がなかった。

・新たな困難の前に、聖天様への信仰を強く持とうと決意した信者だったが、そんな折、以前の朝参りの会の際、偶然、同じ聖天信者で、自宅にピアノのあるS夫人と隣合わせに座り、その際、ピアノの練習の話題が出たことを思い出した。S夫人にピアノを借りたいとの申し出をしたところ、親子揃っての快諾をいただき、再びピアノが自宅に運び込まれる。

・現在、長男は再び思う存分に自宅でピアノが練習出来るようになり、自分の夢に向かって幸福裡に精進に励んでいる。

(これらの利生談に加えて、信者の対談、行者の講話を含めた計14話を収録)